名古屋高等裁判所 昭和29年(う)101号 判決
物品税法第十八条第一項第二号(改正前)には詐欺その他不正の行為を以て物品税を逋脱し又はその逋脱を図り云云と規定され、その所謂逋脱を図りとある法意について所論は即ち未遂の場合を指称するものであると主張するのであるけれども、その所謂逋脱を図りとあるは詐欺その他不正の行為を以て物品税逋脱の目的を達するためなされた積極的行為を総称するものであつて敢てこれを所論の如く未遂の場合のみに限局すべき理由なく逋脱の実行に着手する以前である予備的過程の場合も包含する趣意であると解するを相当とする。蓋し、斯かる物品税逋脱の意思の下に二重帳簿を調製して秘密会計を設けたり或は所要の帳簿に課税の基礎となる数量金額の一部のみを記載して故意に他を秘匿するが如き所為に出でるものは物品税法所定の正しい申告をしない危険のあることは当然予想し得るところであつて、斯くては税法上原則として納税義務者の自主的態度に信頼する申告制度の基本的性格を逸脱し延いて課税基礎の捕促、採証の困難と相俟ち、徴税の公正適確を保持し難い結果を招来するのであるから斯かる予備的過程にある場合と雖も可及的にこれが取締を必要とするからにほかならない。而して原判決の挙示引用にかゝる各証拠の内容を調査検討すれば被告会社の従業員である大塩順一郎が会社の業務に関し物品税逋脱の目的から故意に会社備付の取引高税台帳に原判示第一に記載されている通り会社工場より他に移出販売した燐寸の数量及びその取引金額の一部のみを記載し他を秘匿したという事実を優に認定し得べくその所為は明らかに逋脱の予備行為と目すべきものではあるが前段説明の理由により物品税法第十八条第一項第二号(改正前)に所謂逋脱を図りとある場合に該当するが故に原判決が原判示第一の事実につき同法条を適用処断したのは洵に相当である。論旨も亦採用の価値がない。